寄り道研究所|TECHNOLOGY FLIGHT

AIの電力の壁を、
光が破る

光電融合とCPO――日本の部素材・製造装置・通信技術は、次の半導体競争で出番をつかめるか

光電融合CPOAIデータセンターIOWN日本企業
AIが賢くなるほど、計算量と通信量は増え、データセンターはより多くの電力を必要とします。そこで、チップ同士を結ぶ信号の一部を「電気」から「光」へ置き換える光電融合が、次の重要技術として浮上しています。

01|THE WALLなぜ今、光電融合なのか

データの計算は半導体が担います。しかし、大量のGPUをつないで一つのAIとして働かせるには、チップ間で膨大なデータを動かさなければなりません。ここで速度、消費電力、発熱という三つの壁が生まれます。

生成AIの高度化
GPU数と通信量が増加
電力・発熱が増大
光通信をチップ近傍へ

光は、大容量データを高速に、比較的少ない損失で遠くまで運ぶのが得意です。一方、演算や制御は電気が得意です。どちらか一方に統一するのではなく、得意な場所を分担させるのが「光電融合」です。

計算は電気。
大量のデータ移動は、できるだけ光へ。

関連用語を整理する

用語役割・意味
光電融合光信号と電気信号を適所で組み合わせ、通信の高速化と省電力化を図る考え方。
シリコンフォトニクス半導体製造技術を応用し、シリコン上に光回路を形成する中核技術。
IOWNNTTが進める次世代情報通信基盤構想。光電融合はその中核技術の一つ。
CPOCo-Packaged Optics。半導体チップのすぐ近くに光エンジンを配置する実装方式。

02|CLOSER TO THE CHIPCPOは、光をチップのそばまで運ぶ

従来:プラガブル型

装置の前面で光と電気を変換。交換しやすい一方、変換部からチップまで電気配線が残ります。

次世代:CPO

光エンジンをスイッチASICやGPUなどの近くに置き、電気配線を短くします。

ほんの数cmを短くするだけに見えますが、高速信号ではその数cmが重要です。電気配線が長いほど信号が劣化し、補正用回路や追加電力が必要になります。CPOは、この「最後の数cm」に光を近づけることで、データ伝送部分の電力と発熱を抑えようとします。

数字の読み方:動画では伝送部分の大幅な省電力化や、IOWN構想の長期目標が紹介されています。ただし「変換部分」「装置」「データセンター全体」では削減率が異なります。数字を見るときは、何を分母にした試算かを確認する必要があります。

CPOはすでに試作・初期製品化の段階へ進んでいますが、大量生産、歩留まり、熱、保守性、光ファイバーの精密接続、コストなど、量産で解くべき課題が残っています。

03|GLOBAL RACE開発競争の主役は、半導体側へ

光通信部品は、これまで装置の外側に近い場所にあり、通信機器企業や光デバイス企業が中心でした。CPOでは光エンジンが半導体の隣へ入るため、競争の中心が半導体設計、先端パッケージ、ファウンドリーへ移ります。

設計・製品NVIDIABroadcomMarvellAMDNTTグループ
製造・実装TSMCGlobalFoundriesTower SemiconductorSamsungRapidus
最終需要GoogleMetaAWSAIデータセンター

NVIDIAとBroadcomは半導体設計と巨大な顧客基盤を持ち、TSMCの製造・実装技術を使って先行しています。NTTはIOWNで早くから将来像を描き、光デバイスの技術と製造基盤を持つ点が特徴です。ただし中心となるGPUやスイッチASICを自社で持たないため、どの企業と、どの形で組むかが事業化の焦点になります。

Tower Semiconductorの国内拠点やRapidusとの連携は、日本に不足していたシリコンフォトニクスの量産基盤を補う可能性があります。一方で、計画、試作、量産、採算化は別の段階です。

04|JAPAN'S POSITION日本の強みは「周りの部品」にある

CPOの中心チップだけを見れば、米国の設計企業とTSMCが強い。しかし、CPOは一つのチップだけでは完成しません。光源、ファイバー、コネクター、基板、材料、精密実装、検査装置などが必要です。ここに日本企業の蓄積があります。

領域動画で挙げられた日本企業・注目点
光ファイバーフジクラ、住友電気工業、古河電気工業、SWCC。需要量だけでなく、多芯化と精密接続が焦点。
外部光源・レーザー住友電気工業、古河電気工業、三菱電機。光を安定して供給する重要部品。
パッケージ基板イビデン、新光電気工業。半導体パッケージ基板の既存技術を生かせる可能性。
ガラス基板・材料AGC、TOPPAN、DNPなど。電気と光を一つの基板へ実装する新しい構造が注目点。
光接続・コネクターセンコーアドバンス。大量の光ファイバーを高精度かつ低コストで接続できるかが量産の鍵。
材料開発レゾナック。最終顧客に近い場所で次世代ニーズを直接つかむ動きが重要。
通信・デバイスNTT、NTTイノベーティブデバイス、古河電気工業など。設計から製造・連携までの形を模索。

なぜ、日本企業が強いのか

  • 半導体材料・部品・製造装置で積み重ねた精密加工技術がある。
  • 過去の光通信ブームから研究開発を継続してきた企業がある。
  • ガラス、樹脂、光ファイバー、コネクター、基板など複数分野を国内に持つ。
光電融合は、新しい産業に見えて、
日本が長年磨いてきた技術の交差点でもある。

05|NO EASY WIN「日本に追い風」だけでは終わらない

技術を持っていることと、利益を得られることは同じではありません。日本企業が部素材で高い競争力を持っていても、最終仕様を決めるハイパースケーラー、半導体設計企業、製造を握るファウンドリーとの距離が遠ければ、価格決定力を持てない可能性があります。

注意:「関連技術を持つ」「試作品に採用された」「量産採用が決まった」「売上と利益に寄与した」は別々です。株価が先に期待を織り込む場合もあるため、ニュースの段階を区別して観測します。
  • 量産性:何百本もの光接続を高速・高精度・低コストで組み立てられるか。
  • 信頼性:高温環境で長期間動き、不良率を抑えられるか。
  • 標準化:複数企業の部品が共通仕様で接続できるか。
  • 主導権:最終顧客の要求を早くつかみ、設計へ反映できるか。
  • 中国:国内で完結する供給網と速い開発速度を持つ競合の追い上げ。
  • 収益化:設備投資負担を超える売上、利益率、キャッシュフローを生めるか。

06|MACHIN'S WATCH LIST投資では「期待」から「数字」への移動を見る

光電融合関連株を一つのテーマとしてまとめるだけでは、どこに利益が残るか分かりません。企業ごとにサプライチェーン上の位置を確認し、次の順番で観測します。

  1. 顧客名と用途:誰の、どのCPO・データセンター製品に入るのか。
  2. 開発段階:研究、試作、サンプル出荷、認定、量産開始のどこにいるか。
  3. 能力増強:新工場・新ラインの稼働時期と生産能力。
  4. 業績寄与:関連売上、受注、利益率が決算資料に現れたか。
  5. 技術の代替可能性:その部品は他社へ簡単に置き換えられるか。
  6. 株価との距離:実績より先に期待だけで上昇しすぎていないか。
飛行機だけを見ず、光が通る「航路」全体を見る。

CPOの勝者は中心チップの会社だけではありません。しかし、部素材企業すべてが勝者になるわけでもありません。採用、量産、利益の三段階を追うことが、寄り道研究所の観測になります。

資料:PIVOT動画「AI×半導体の次世代技術:光電融合」(添付文字起こし、約50分)をもとに、誤変換を修正し、学習用に再構成しました。元動画を開く

表記修正例:高電融合→光電融合、反動体→半導体、CPU→CPO、ION→IOWN、NDIA→NVIDIA。企業名・数値・開発状況は動画公開時点の説明であり、投資判断前には各社の最新一次資料で再確認してください。