寄り道研究所|NIGHT FLIGHT SPECIAL I【世界編】

日本企業は、
なぜ海外へ出たのか

「日本を捨てた」のではなく、仕事を守るためだった?

初級レベル
FLIGHT MAP
日本の会社が海外にたくさんの工場をつくった時代がありました。人件費や生産コストは理由の一つです。しかし、それだけではありません。特に小さな会社や町工場まで見ると、もっと切実な事情が見えてきます。

01いつものお客さんが海外へ行ってしまった

たとえば、日本に小さな「ネジ工場」があったとしましょう。この工場は長い間、大きな自動車会社へネジを納めていました。

ところがある日、自動車会社から「今度、外国に大きな工場をつくります」と言われます。ネジ工場の社長さんは「そうですか。頑張ってください」だけでは済みません。自分の会社の大切なお客さんが、海外へ行ってしまうからです。

「外国の工場でも、今までと同じネジを作ってもらえませんか?」

海外へ工場をつくるには、たくさんのお金が必要です。知らない土地で、言葉も法律も違います。働く人も探さなければなりません。失敗すれば、大きな借金が残るかもしれません。

社長さんだって「よーし、外国へ冒険に行くぞ!」と思ったわけではないでしょう。むしろ「できれば今まで通り、日本で仕事をしたい」と思った会社もあったはずです。

02行かないのも怖い。行くのも怖い。

海外へ行かなければ、大切なお客さんからの注文が減るかもしれません。会社の売上が減り、社員の仕事が減り、給料を払うのも難しくなる。最悪の場合、会社そのものが続けられなくなるかもしれません。

海外へ行くのも怖いAND日本に残るのも怖い

そんな選択を迫られた会社もあったのです。

03守りたかったもの

もっと儲けたかった会社もあったでしょう。でも、それだけではありません。

  • 会社を残したい。
  • 仕事を残したい。
  • 社員とその家族の暮らしを守りたい。

そのために、大きなリスクを背負って海外へ出た会社もあります。特に中小企業を見るとき、この視点を忘れたくありません。

04大きな会社にも、いろいろな理由があった

大企業にも、人件費だけではないさまざまな理由がありました。

  • 日本の商品を買ってくれる人が海外に増えた。
  • 海外のお客さんの近くで作ったほうが便利になった。
  • 取引先が海外へ移った。
  • 円高などで、日本から輸出するより海外で作ったほうがよい場合もあった。

つまり企業は、その時代その時代で「どこで作れば会社を続けられるだろう?」と考えていたわけです。

05学校で考えると分かりやすい

ある町で子どもの数が減り、空いている教室が増えたため、学校をまとめたとします。その時点では合理的な判断だったのでしょう。

ところが20年後、突然たくさんの家族が引っ越してきて「教室が足りない!」となった。だからといって「昔、学校をまとめた人が間違っていた」とは簡単に言えません。そのときと今では、条件が違うからです。企業も同じように考えることができます。

06時代が変われば、答えも変わる

昔は海外へ出ることが、会社を守るための答えだった。ところが今、半導体工場が日本にでき、AIやデータセンターへの投資が増え、日本で作ることの大切さが見直されています。世界の情勢も変わりました。

すると企業は、また考えます。「今度は日本で作ったほうがいいのかな?」

企業がコロコロ考えを変えたのではありません。
周りの条件が変われば、いちばん良い答えも変わるのです。

07「日本へ戻ればいい」だけでもない

海外へ出た工場を「それなら全部、日本へ戻せばいい」と言うのも簡単ではありません。日本へ新しい工場をつくるには、お金、働く人、技術者、電気、土地、そして部品を作る会社が必要です。

海外へ出ることが大きな決断だったように、日本へもう一度投資することも大きな決断なのです。

08だから、周りの会社まで見てみよう

大きな半導体工場ができると、ニュースでは「○兆円の巨大投資!」と報道されます。でも、NIGHT FLIGHTではそこで終わりません。

その工場の周りにいる建設会社、部品会社、材料会社、運送会社、電気設備会社、そして小さな町工場。そこまで仕事が届いているでしょうか。

その会社にちゃんと利益が残り、社員の給料を上げ、さらに新しい機械を買えるでしょうか。そこまでお金が流れて初めて、本当の国内回帰に近づく。私たちは、そう考えてみます。

09初級レベルのポイント

日本企業が海外へ出た理由を「安い人件費を求めて、日本を捨てた」だけで考えると、大切な部分を見落としてしまいます。特に中小企業の中には、次のような会社もありました。

お客さんが海外へ行った ↓ 仕事を守るためについていった ↓ 大きなリスクを背負って海外へ進出した

だから、昔の判断を今の条件だけで責めるのではなく、「そのとき、その会社はなぜそうしたのだろう?」と考えてみる。そして今、条件が再び変わり始めています。

企業が変わったのではない。
企業を取り巻く条件が変わった。
NEXT QUESTION

では、なぜ今、日本国内への投資が
もう一度注目されているのでしょう?