NIGHT FLIGHT
📡 Chapter 4
レーダーを見る
― 見えない資金を、数字の変化から探す ―
でも、通過した「跡」は数字に残る。
株価・出来高・Vol_ratio・VWAP・関連銘柄の広がり。
Chapter 4では、それらを市場を見る「レーダー」として考えます。
はじめに|レーダーは答えを教えない
Chapter 3では、市場のお金がどこからどこへ移動するのかを考えてきました。ところが市場には、本物の飛行機のように「私はいま銀行株へ向かっています」と表示してくれる資金はありません。
それでも、資金が通過した痕跡は残ります。株価、出来高、VWAP、値動き、そして関連銘柄やセクターへの広がりです。
「どこを調べればいいか」を教えてくれる機械です。
この章では、難しい専門用語から始めません。まず「なぜ、その数字を見る必要があるの?」から出発します。
01|「100万株」は多いの?
株価の画面を見ると、「出来高 1,000,000株」と表示されていました。では、100万株は多いのでしょうか?
実は、これだけでは分かりません。普段10万株しか取引されない銘柄なら100万株は大きな変化です。しかし、普段1,000万株取引される銘柄なら、100万株はむしろ少ないかもしれません。
✈️ 空港で考えてみよう
いつも10機ほど飛ぶ小さな空港に、今日は100機の飛行機が来た。これは「今日は何か違うぞ」と感じます。一方、いつも1,000機飛ぶ巨大空港で100機しか飛んでいなければ、「今日は少ないな」と感じます。
「いつもと比べてどうなの?」が最初の問い。
02|出来高 ― 飛行機の数
NIGHT FLIGHTでは、出来高を「空を飛んでいる飛行機の数」のように考えます。
いつもより出来高が増えたら、レーダーが「ピッ」と反応した状態です。でも、ここで「買いだ!」とは言いません。飛行機が多いことは分かっても、どちらへ向かっているのかはまだ分からないからです。
「買う側の活動が強くなっているのかな?」
「大きな売りが出ているのかな?」
どちらも、この時点ではまだ「仮説」です。
03|今日は、いつもの何倍?
では、「今日はいつもより出来高が多い」を、もっと簡単に表せないでしょうか。
たとえば同じ時間までの出来高が、いつも100万株、今日は150万株だったとします。
つまり、今日は「いつもの1.5倍」。
この「いつもと比べて何倍か」を見る数字を、NIGHT FLIGHTでは Vol_ratio(出来高比率) として観測します。
Vol_ratio = 「今日は、いつもの何倍?」を見る数字。
04|Vol_ratio ― 今日はいつもの空と違う?
| Vol_ratio | 読み方 |
|---|---|
| 1.0 | いつもとだいたい同じ |
| 1.2 | いつもの1.2倍 |
| 1.5 | いつもの1.5倍 |
| 2.0 | いつもの2倍 |
ただし、Vol_ratio 1.5 = 株価が上がる、ではありません。Vol_ratioは「買え!」という売買シグナルではなく、「何か違う。よく見てみよう」という警報装置です。
05|VWAP ― 今日の基準高度
レーダーに反応が出ました。次に知りたいのは、その飛行機がどのあたりを飛んでいるのかです。ここでVWAPが登場します。
NIGHT FLIGHTでは「今日の基準高度」と考えます。
株価がVWAPより上を安定して飛んでいるなら、「基準高度より上で飛んでいるな」。何度もVWAPを割り込むなら、「高度を維持できていないな」と観測できます。
VWAPまで下がる → そこで反発する → 再び上昇する、という動きなら、「VWAP付近を意識している参加者がいるのかな?」という新しい問いが生まれます。
06|一機だけ? それとも編隊?
半導体A社だけが上昇し、出来高も急増した。それだけならA社固有のニュースかもしれません。
ところが、B社も上昇、C社も出来高増加、半導体指数まで上昇してきた。するとレーダーには一機ではなく、複数の機影が映り始めます。
点 → 線 → 面
一銘柄の異変が関連銘柄へ、さらにセクター全体へ広がる。ここでChapter 3の「このセクターへ資金が向かっているのではないか?」という仮説を、Chapter 4のレーダーで確かめられるようになります。
07|レーダーの基本操作
ここまで、出来高、Vol_ratio、VWAP、そして関連銘柄への広がりを見てきました。
でも大切なのは、一つの数字だけで答えを決めないことです。
たとえばVol_ratioが1.5を超えた。そこで「出来高が増えた。買いだ!」とは考えません。NIGHT FLIGHTでは、レーダーに反応が出たところから、次の4段階で考えます。
あれ? いつもと違う
なぜだろう?
もしかすると?
本当にそうか?
SIGNAL|反応 ― 「あれ? いつもと違う」
まずレーダーが異変を見つけます。出来高が急に増えた。Vol_ratioが高くなった。株価がVWAPを超えた。関連銘柄も動き始めた――。
ここでは、まだ答えを出しません。
QUESTION|疑問 ― 「なぜだろう?」
出来高が増えたのはなぜ? この銘柄だけ? 同じ業種にも動きが出ている?
レーダーが見つけた異変を、「問い」に変える段階です。
HYPOTHESIS|仮説 ― 「もしかすると?」
ここで初めて、自分なりの説明を考えます。たとえば、
ただし、仮説は答えではありません。
VERIFY|検証 ― 「本当にそうか?」
VWAPはどうか。関連銘柄はどうか。セクター全体はどうか。時間が進んでも動きは続いているか。
こうして、一つの数字から始まった小さな異変を、別の数字で確かめていきます。
🟢 初級|異変に気づく
SIGNAL → QUESTION
初級で覚えてほしいのは、「異変を見つけても、すぐ答えを決めない」こと。
まずは「おや?」。そして「なぜだろう?」。ここまでできれば、立派なレーダー係です。
🔵 中級|仮説を作る
SIGNAL → QUESTION → HYPOTHESIS
たとえば、Vol_ratio 1.7、株価はVWAPより上、同じ業種のB社・C社も上昇。
そこから「このセクターへ資金が向かっているのでは?」という仮説を作ります。
🔴 上級|仮説を疑う
SIGNAL → QUESTION → HYPOTHESIS → VERIFY
9:15に立てた仮説を、9:30、10:30、14:00でも確かめます。
動きが続かなければ、「最初の仮説は違ったかもしれない」と考え直します。
自分の仮説を、自分で疑える人。
ここまで来ると、レーダーは単なる数字を見る道具ではなくなります。市場で起きていることを考え、仮説を作り、確かめるための「観測の作法」になります。
レーダー係になってみよう
A社は、いつも午前10時までに出来高100万株ほどです。ところが今日は、午前10時の時点で150万株になっていました。
あなたなら、どちらを選びますか?
まだ売買を決めない。まず「なぜ今日は多いのだろう?」と考える。
そして、いつもの100万株に対して今日は150万株なら、Vol_ratioは1.5。ここから株価、VWAP、関連銘柄へとレーダーの範囲を広げていきます。
✈️ Chapter 5へ|高度と速度
レーダーに何かが映りました。出来高が増え、Vol_ratioも高い。株価はVWAPより上で、関連銘柄にも動きが広がっている。
では、その飛行機は本当に力強く上昇しているのでしょうか。それとも、すでに勢いを失い始めているのでしょうか。
株価・騰落率・モメンタムへ。
モメンタムとは、難しく言えば値動きの勢い。NIGHT FLIGHTではまず、「いま、その株に勢いがあるの?」と考えれば十分です。
次章:Chapter 5|高度と速度 ― 株価・騰落率・モメンタム ―